【読書】維新の肖像 安部龍太郎著 [読書]
この小説は劇中劇ならぬ小説中小説という形態を取っています。
太平洋戦争前に日本の行動に警鐘を鳴らし続けた実在の歴史学者「朝河貫一」氏が、戊辰戦争を幕府側として闘った父の記録を基に小説として書き残す形となっています。
白河藩士として戦った父の記録ということは通説では「賊軍」と呼ばれた側の記録となります。
歴史は勝った側が作るという言葉がありますが、今の日本史は明治維新を実現した薩長側の歴史となります。 負けた側にも当然言い分が有り一方的に悪であることはないはずです。
筆者は明治維新自体の功績は認めていますが、そのやり方に問題が有りその後の日本に多大な影響を与えたのではないか?ということを、実際にその旨を主張していた朝河貫一氏の小説を通して提起しています。 そしてその影響が昭和まで続きあの戦争へと繋がったと。
強引に自らを官軍と称し、会津など他藩を賊軍と称した薩長のやり方を後の日本軍(特に長州色の濃い陸軍が)が引き継ぎ無謀な日中戦争そして太平洋戦争へ導いていったということです。
歴史の見方を考えさせられる一冊でした。
印象に残っているのは朝河貫一氏が度々口にする父親が語っていた以下の言葉です。
明治維新で日本人が失くしたものは「人を思いやるやさしさ」
下民は虐げやすいが、上天はあざむき難し
確かにそうかもしれないと考えます。
維新の肖像
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